マイクル・コーディさん

「イエスの遺伝子」     徳間書店


 この小説では、「ジーンスコープ」と呼ばれる、遺伝子を自動的に解読してしまうスーパーコンピュータが登場して、ヒトゲノム計画を一気に時代遅れにしてしまう。これを発明した遺伝学者トム・カーター博士とコンピュータ学者のジャスミン・ワシントン博士にノーベル賞が授与される。ものがたりは、この二人の授与式の日に、妻オリビアがトムの身代わりに殺される場面から始まる。暗殺者は、イエス・キリストの再臨を信じる秘密組織のエージェントであった。
 妻が暗殺されたあと、トムは自分の娘ホリーの遺伝子をジーンスコープで解析し、まもなく悪性の脳腫瘍を発病することを知る。司法解剖で妻の脳から腫瘍が認められたからだ。妻の母親もやはり脳腫瘍で死んでいる。結果、ホリーもその遺伝子異常を引き継いでいることがわかる。残された生存期間は1年。トムはなんとか治療方法を見つけるため、プロジェクトを結成する。癌が自然緩解した症例から、治癒能力を起動する遺伝子を見つけようとするものだ。癌は細胞の異常増殖である。それは正常細胞にとっては「異物」なのだが、自己細胞の変異であるため、それを異物として認識できない。そのため免疫作用が働かず、異常細胞が際限なく増えてしまう。しかし、何らかの理由で突然免疫システムが癌細胞を「体外異物」として認識して作用を始め、消滅してしまうことがある。その機能を司る遺伝子があるはず、というのがトムの主張だ。その遺伝子を持つ人物は、歴史上最大の治癒力をもった人物・・・・そう、ナザレの大工でイエス・キリストと呼ばれた男だ。その男の遺伝子を見つければ、ホリーを治療する方法がわかる。こうして、イエスの遺伝子探索が始まった。

 一気にラストまで読んでしまう迫力に満ちた小説です。遺伝子関連の本が好きな人にはお勧めの一冊です。